イスラム金融の基礎 入門編
シャーリザ・オスマン
ザヒルディン・ガザリ
サイド・モハマド・ナイム・サイド 著
森林高志 訳
公益法人日本マレーシア協会 発行
ISBN978-4-87738-485-2
目次
1.序説
- イスラム教という概念
2.シャーリアの原則とタビ(自然)
- シャーリアの原則
- タビ(自然)の原則
- シャーリアの源泉
- イスラム銀行業務の原則
- 非イスラム銀行とイスラム銀行の違い
3.利益に関するイスラム教の理論
- 利益
- リスク
- 責任(ダマン)
- 労働と努力
- 応用
4.リスクと不確実性
- ガラール(曖昧さ)の定義
- リスクの定義
- ガラール(曖昧さ)の型
- ビジネスの結果におけるリスクと不確実性
- 契約におけるリスクと不確実性
- 応用
5.リバ:イスラム教における利子
- リバ(利子)の定義
- リバ(利子)の型
- リバ(利子)の禁止
- 利子の害悪
6.イスラム金融ならびに銀行業務における関連課題
- 中央銀行の役割とイスラム金融
- 国際的な金融機関とイスラム金融
- イスラム金融:マレーシアにおける住宅金融
- 住宅ローンの運用
- 規制:国内課題と国際課題
特徴と感想
全部で90ページ弱しかない薄い本ですが、中身は充実しています。
この本が他の本とは違うところは、イスラム教徒が執筆していることではないかと思います。
イスラム金融について、いきなり、イスラム金融の特徴の説明に入るのではなく、一神教や信仰の概念といった説明から始まり、シャーリアについても、大本に立ち返って解説されています。こういった内容は、イスラム教徒でなければ語れないのではないかと思います。
概念とか、大本に立ち返ってなどといっても、極めて簡潔で分かりやすい説明となっており、初心者がイスラム教を理解するうえでも役に立つと思います。
この本では、イスラム教というもの、コーラン、シャーリアといったイスラム教独自の基本的な体系を知ることは、イスラム金融がなぜそういう形式をとるのか理解する上で非常に大事であることを理解させられます。
金融システムだけに焦点を当てると、「イスラム金融では”利子”が宗教上の理由により禁止されています」と一言の事実の記述で終わってしまうかもしれませんが、本書では、なぜ、”利子”が禁止されているか、その心は、といったところが丁寧に解説されており、イスラム教の考え方に対する理解が深まるのではないでしょうか。
マレーシアは、イスラム教国の中でも、特に近代化が進んでおり、現在では、イスラム世界と非イスラム世界をつなぐいわば”窓”として、イスラム金融の中心地にもなっています。
イスラム教の国々と、石油産出国は多くが重なっており、世界経済への影響も非常に大きなものがあります。
今後ますます、イスラム金融の影響力は増してくるのではないでしょうか?
金融の専門書としては物足りないかもしれませんが、イスラム金融(イスラム教への理解)の入口・入門書としては非常によくできた良書です。
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