マレーシア移住の年金税制と住民票 日本非居住者とマレーシア居住者は似て非なるもの

年金・税金

日本の居住者であるか、非居住者であるか(所得税法上)

 非居住者かどうかは、日本に住所、または引き続き1年以上の居所、の有無で判断されます。実態として日本に住所とすべき場所がなく、海外で継続的に居住しているならば、原則は非居住者に該当すると判断されます。

 ここで注意すべきは、住民票の有無ではなく、あくまでも生活の実態として総合的に判断されるということです。

 よく、「住民票を抜いてきたから非居住者になった」とおっしゃる方がいらっしゃいますが、そんなに単純ではありません。

 非居住者になれば、日本を源泉とする所得に対してのみ課税されます。例えば、日本居住者はマレーシアの定期預金金利に課税されますが、非居住者になると課税対象外になります。

租税条約(日馬租税協定)

日本の非居住者であるということと、マレーシアの居住者であるということは、似て非なるもの

 非居住者であっても、日本を源泉とする所得に対しては課税されます。年金も実は課税対象なのです。非居住者だから年金の税を支払わなくてもいいというわけではないのです。

 まず、単純に日本の非居住者の場合、年金については、「源泉分離課税」で、天引きされちゃいます。

じゃあ、なぜ、MM2Hでロングステイしている人は、年金が実質無税になるんですか?

TONE
TONE

それは、マレーシアの居住者になったからです。

 マレーシアとの租税条約により、マレーシア居住者となった場合に、年金に対する課税権がマレーシアに移るとみなされて、年金に対する日本の課税が免除されます。実際には、マレーシアに納税する義務が生じますが、マレーシアでは日本の年金のようなマレーシアから見て海外に源泉のある収入を持ち込んでも課税されません。

マレーシアの税制は属地的な性質を持っている。当該所得が、マレーシア国内を源泉とするもの、あるいはマレーシア国外から送金されて国内で受領されたものである場合は、原則マレーシアで課税される。ただし現在では、個人や会社(銀行業、保険業、空海運業を除く)がマレーシア国内で受領した外国源泉所得については、免税の対象となっている。

https://www.jetro.go.jp/world/asia/my/invest_04.html

 日本の非居住者であるということと、マレーシアの居住者になっていることは、非常に良く似ていますが、税務上の取り扱いが異なると言う事がお分かりいただけましたか?どこにも居住地を持たないPT(Permanent Traveler)の場合、年金は日本で源泉課税です。

 なお、マレーシアの居住者として日本の年金の免税を受けるには、「租税条約に関する届出書」を年金事務所や企業年金事務所経由で所轄の税務署に提出する必要があります。(住民票は関係ありません)

租税条約といっているもの:日馬租税協定

「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とマレイシア政府との間の協定」

第15条1 一方の締約国の居住者である個人が他方の締約国から取得する退職年金又は保険年金に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

http://longstay.yourcpa.jp/taxagreement.pdf
TONE
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わかりにくい文章ですが、ちょっと読み替えてみましょう。

「一方の締結国」を「マレーシア」と読み替えて、「他方の締結国」を「日本」と読み替えると良くわかります。

「マレーシア」の居住者である個人が「日本」から取得する退職年金又は保険年金に対しては、「マレーシア」においてのみ租税を課することができる。

TONE
TONE

マレーシアの居住者になると、年金は、マレーシアにおいてのみ租税を課することができるということですから、日本では課税されないということです。

 これは、年金の話であり、他の所得は当てはまりません。日本を源泉とした所得は原則として日本で課税されます。年金が租税条約による例外なのです。

参考リンク http://longstay.yourcpa.jp/taxagreement.pdf

共済年金(公務員の方)の場合

第11条2 政府の職務の遂行として提供された役務につき、日本国の国民である個人に対し、日本国政府によつて支払われる報酬又は日本国政府により若しくは日本国政府が拠出した基金から支払われる退職年金については、マレイシアの租税を免除する。ただし、その個人がマレイシアの市民である場合及び永住のためマレイシアに入国することを許可された者である場合は、この限りでない。

http://longstay.yourcpa.jp/taxagreement.pdf

 公務員の方の年金は、「日本国政府が拠出した基金から支払われる退職年金」です。マレーシアの租税が免除されるということは、逆に言うと、日本が課税できるということになります。

 マレーシアに帰化するか永住権を獲ない限り、公務員の共済年金は日本の課税権が有効ですので、「非居住者の税額である源泉分離課税」で天引きということになります。

TONE
TONE

公務員のかたの共済年金は、民間とは異なり、日本で課税されます。

 日本非居住者であることと、マレーシア居住者であることが、結構混同されているのではないでしょうか?日本の税制と2国間の租税条約をきちんと分けて理解しておくことが必要です。

TONE
TONE

 なお、この記事は、税務署や税理士に確認した内容ではありません。条約や法の解釈に誤りがあるかもしれません。実践に当たっては、個人によって事情も異なりますので、この記事を鵜呑みにせず、専門家に確認するなど、慎重に対応してください。

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