この投稿は、筆者が思ったことをつづった雑文です。
「定年後は海外でのんびり暮らしたい」という言葉は使い古された感がありますが、漠然と、海外ロングステイを夢見る人は多いのではないかと思います。
数週間程度の短期間の海外旅行とは違って、”住む”となると、全く違う問題が出てきます。自分自身が外国で適応できるかどうかという問題もより切実になってきます。
ここでは、年オーダーでマレーシアで暮らすことを念頭においています。
これは、筆者の思うところですので、そうじゃないという意見は当然あると思います。ただ、議論がしたいのではなく、筆者はこう考えていますということですから、気にいらなければ読み捨ててください。
マレーシアのいい点悪い点
マレーシアは、比較的ロングステイの障害が少ない国だと思います。
近隣にロングステイ候補国(タイとかフィリピンか)と比べて、優位にあるか、または同等以上、もしくは日本よりも優れている点を挙げてみると。
ポジティブな点
- 気候が温暖で年間を通じて安定しているので、体への負荷が少ない。また、夏の準備があればよい。地震・台風などの自然災害が少ない。
- 長期滞在ビザが容易に取得できる。(MM2H)
- 日本との行き来が比較的容易。
- 住居費が安い。生活費は総じて日本より安く済ませることが可能(生活スタイルによる)。
- 都市部だけでなく地方でも英語が通じることが多い。たいていは英語でコミュニケーション可能。
- マレー語がアルファベット表記であり、他と比べれば習得しやすい。
- 親日国である。
- イスラム教が国教ではあるが、多民族国家であることもあり、宗教の自由が認められており、他宗教にも理解がある。
- 移動体通信網も整備されており、たいていの場所でインターネットが使える。
他にもあるかもしれませんが、大体こんなところでしょう。(もちろん、魅力を語りだすともっとあると思いますが。)
一方で、気になる人、気にならない人の差が出る部分ではありますが、他と比べてよくないか、または、日本と比べてよくない点。
ネガティブな点
- 四季がない。スコールや突風、落雷は多い。北半球の夏場ヘイズがくることがある。
- MM2Hは市民権でも永住権でもない。国の援助(福祉)は受けられない。
- 日本食は総じて高価。また、イスラム教国のため、アルコール類が高価。
- 場所によっては衛生的に汚いと感じるところがある。臭いところがある。
- 現地人は、よく言えば融通が利く、悪く言えばずぼらでいい加減。時間通りにやってこないなど当たり前のこと。銀行や役所でも油断ならない。
- 車社会なのに、車が高価。クアラルンプールなど場所によっては渋滞がひどい。
- 治安がいいとはいいがたい。凶悪犯罪は必ずしも多くないが、ひったくり、すりなどは非常に多い。
- 急病であっても、お金がないと診療が受けられない。
大まかに、ネガティブな要素を記載しました
筆者は、シンガポールに2年間暮らした経験がありますし、マレーシアにも何回も訪れており、「治安」以外のネガティブな要素はもう飲み込んでおりますが、 人によっては、ネガティブな要素に引っ掛かりを感じるかもしれません。
自分自身の事情
マレーシアが肌に合い、住んでみたいと思っても、住めない人や、何年もロングステイを続けていても、事情により日本に帰国する人がいらっしゃいます。
ロングステイヤーの方からお話を伺うと、ロングステイしたいのにできない、または、帰国しないといけないという事情は大きく3つ。逆に言うと、この3つをクリアーすることがロングステイの最低条件とも言えます。
- 自身の病気
- お子さんが自立されていない(まだ学生・もしくはニート)
- 親の介護
1.病気については、軽い病気や、短期間で治る病気は何とかなりますが、持病になったものは、海外旅行保険の対象外であることもあり、医療費の負担次第では、帰国せざるを得なくなります。(経済的に余裕があればマレーシアで引き続き治療を受けることが可能かもしれません。)
2.お子様がまだ学生だったら難しいですね。自分である程度稼げるようになってもらわないと、経済的負担が大きいです。お子様がニートなのでロングステイを断念したという例はあまり表に上がってきていませんが、いらっしゃるようです。海外ロングステイしながら、日本に残った稼ぎのない子供の面倒を見るというのは、経済的によほどの余裕がないと無理で、普通のサラリーマンなら破綻してしまいます。
3.親の介護があるので、短期滞在はできても長期滞在は無理という方。これは結構いらっしゃいます。
これらの裏返しが、ロングステイに踏み切る・継続する条件となります。
- 病からの自由(解放)
- 経済的自由
- 時間的自由
そのほかの条件
現在重大な疾患がなく、どこに住んでもよい時間的自由がある人で、かつ、”ある程度の経済的自由を獲得している人”が海外ロングステイ可能な人ということですが、これ以外にも、海外ロングステイ(マレーシアロングステイ)に向く人向かない人があると思われます。
最重要・コミュニケーション能力があり、自助努力できること
一番重要なのはコミュニケーション能力ではないかと思います。コミュニケーション能力の根幹は言語能力です。かつて英国植民地であり、多民族国家であるマレーシアは、英語が通じますが、英語が母国語という方は少なく、コミュニケーションのための言語として使われています。
筆者の私見ですが、マレーシアの英語、通称マングリッシュの訛りはきついので、最初は聞き取れませんが、 慣れると、欧米人と話しているよりも伝わりやすいと感じています。お互いが母国語ではなく、コミュニケーションのツールとしての英語であるためではないかと愚考しております。
たとえ、伝わりやすいといっても、英語が片言でさえもできない場合は、マレーシアのロングステイは難しいのではないかと思います。
言語能力、すなわち英語力以外では、何とかして伝えよう、聞き取ろう・理解しようという姿勢も大きな要素です。
スマホの使い方に精通すれば、通訳機や翻訳機のように使うこともできるようになってきています。また、現地の銀行員の中には、話せないのなら、先に必要事項のメモを書いておくなり、筆談するなりしたらどうかとのご意見もあります。
こういう、自ら何とか打開するための努力をするという姿勢も”コミュニケーション能力”の一つといっていいと思います。
スマホでネットワーク検索が使えること
今どきはインターネットで調べると、かなりのことがわかる時代です。ブラウザ上で日本語に翻訳してくれる機能だってあります。また、ブラウザだけでなく、地図ソフトの検索機能も高度化しており、いちいちブラウザ検索して住所を調べて地図ソフトに入れる必要もなく、地図ソフト上で直接検索が可能ですし、ナビゲーションもしてくれます。
最低限スマホで情報検索や地図などが利用できることも重要なポイントです。
最近はスマホの発達で、必ずしもPCは必要とはいえなくなってきています。PCが無くてもスマホが代わりになることが多いですが、逆は難しいこともあります。
どんなツールを使おうとかまわないのですが、「調べる」ということが普通にできる能力と意欲が必要です。
自動車の保有(運転できること、車を買う経済力があること)
「マレーシアは車社会です。自動車がないと困ります。」というのは、少し古くなりつつあるかもしれません。
公共交通機関の発達と、Grabのサービスやカーシェアの普及により、必ずしも必須ではなくなってきているとも言われ始めました。
ただ、車の乗り始めたらもうやめられない、一気に世界が広がって、「マレーシアロングステイの醍醐味を味わえるのは車に乗ってからだ」という方が多いです。
また、場所によっては、歩行が危険なエリアもあり、そういうところでの移動は車が必要です。(もちろん、Grabでも構いませんが、雨が降ってきてなかなか車が来なくて、待てずに無理やり歩いて怖い目に合うということもあり得ます)
ですので、生活するだけなら、車が無くても何とかなりますが、マレーシアライフを満喫するために、車を所有することを前提に考えたほうがいいと思います。たいていのコンドミニアム(住居)には、駐車場が1台ないし2台分は用意されていますから、車を購入するお金を考慮しておくということです。
車の運転ができる、車を購入できる経済力がある、ということも重要なファクターだと思います。
東南アジア特有のボワーンとしたぬるさ、いい加減さを飲み込む
マレーシアの良くない点に上げましたが、普通の日本人の感覚だと「はあ!?」といいたくなることが連発します。
日本人の感覚では、きちんとしていて当たり前の役所や銀行ですら、しょっちゅうミスが起こります。それが、彼らのいい加減さから発していることばかりです。(これはロングステイするまでもなく、MM2Hなどを取得して、銀行や役所と付き合うことが始まると大抵は経験します)
怒鳴りたくなることが日常茶飯事ですが、我々セカンドホーマー(とその予備軍)はあくまでも外様、外国人ですから、あくまでも彼らの国の常識に従わなければなりません。”郷に入りては郷に従え”がそのままそっくり当てはまります。
とにかく、予想通りに物事が進まないことがしょっちゅうです。
このボワーンとしたぬるさとそのせいで起こるドタバタに耐え、対応をお願いし、打開し続けねばなりません。決して、怒ってはならないという、ある種の諦めのような諦観の悟りを開かないと、イライラしてばかりになります。
この部分が合わない方は長期滞在は難しいかもしれません。ストレスがたまるでしょうから。
汚い、臭いへの耐性
クアラルンプールは大都会ですが、きれいなところばかりじゃありません。残念ながら、臭いところもあります。潔癖症の方は厳しいかもしれません。
物価が安いといわれますが、それは、ウェットマーケットと呼ばれる現地の市場で購入する場合であり、日系のきれいなスーパーマーケットの食材の価格は、日本からの輸入品が高価なのはもちろん、日本のものでなくても、あまり日本と変わらない価格です。おそらく、日本の安売りスーパーのほうが安いでしょう。
ただ、TTDIにあるウェットマーケットは筆者(および筆者の妻)の基準ではきれいでした。大阪天満にある市場”ぷらら天満”のほうが汚いかもといったレベルです。
TTDIのウェットマーケットが汚いということでだめなら、アジア各国どこ行っても無理かもしれません。
逆に言うと、大阪天満の”ぷらら天満”で別段違和感なく買い物できるのでしたら、少なくともTTDIのウェットマーケットはクリアできると思います。(しかしながら、TTDIのウェットマーケットは特別にきれいに改装されたところですので、ここですら無理という方は、他も無理と思ってください。)
他には、トイレの問題があります。そもそも、日本は、公共トイレの”偏差値”が非常に高い国です。マレーシアが決して特別低いわけではありませんが、”日本が標準”だと思っていると、失望します。
ただし、だんだん慣れといいますか、耐性がついてくるものなので、最初ダメでもしばらくすると気にならなくなったりします。個人差の大きいところです。
ロングステイのありかた
年オーダーで暮らすことを念頭において書きました。ロングステイを新たな生活の始まりと思って、いろいろと発生する障害を克服していくことに面白さを見いだせる人は、何とかなるのかなと思いますが、日本より物価が安いとか、その程度の理由でマレーシアに来ると大失敗といいますか、大変な後悔をすると思います。
ことに、現地での食事が口に合わなければ、自炊しない限り日本食は高価です。さらに、きれいな日系スーパーマーケットでしか買い物しないとなると、日本にいるよりも生活費が高くつくこともあり得ますから、なんとなく物価が安いからという理由でロングステイを始めると思惑外れになります。
先輩ロングステイヤーがおっしゃるのは、「 旅行と住むのは違う。まずはお試しステイ」だそうです。
もっと短いせいぜい数か月程度までのステイを繰り返すかまたはいろんな場所でステイするというセカンドライフもありです。
せっかくのセカンドライフですから、一つに決めつけずに、いろんな可能性の中から自分に合った方法を選びたいですね。
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