マルチカレンシー口座に重大な注意点発覚下記記事も参照願います。
2020年9月16日に、トランスファーワイズからアナウンスメールが来て、「新しいマルチカレンシー口座の紹介です。」ということで、待望のマルチカレンシー口座が使えるようになりました。
実際にマルチカレンシー口座を使ってみての感想を述べたいと思います。
情報は2020年11月現在のものです。口座はすぐに作成できたのですが、実際に数百万円単位のお金を用意できたのが11月の後半になってからであり、口座開設から実際の送金まで、時間がかかるわけではありません。
銀行口座とは違って、いくつかの注意点はありますが、外貨で着金する人にとっては大きな利便性があります。
一部、マニアックな使い方をしている部分がありますし、だれもが便利になるわけではないですが、筆者が実際に使ってみて、「これは便利」と思ったことについて記します。
マルチカレンシー口座で口座情報が取得できる通貨(2020年11月現在)
トランスファーワイズのマルチカレンシー口座は、一言でいうと、いろんな通貨を預金しておくことができる銀行口座に似た機能です。
マルチカレンシー口座で選択できる通貨は50以上も用意されています。しかしながら、その中で、”現地口座情報が付与される通貨”は7通貨です。(2021年11月現在)
マルチカレンシー口座の通貨が”現地口座情報が付与される通貨”であるならば、まるで、銀行の個人名義の口座を開設したみたいに、口座番号が付与されるのです。
2020年11月現在、下記口座情報が付与可能です。残念ながら日本円はありません。
- 英国の口座番号とソートコード
- ヨーロッパのIBANコード
- 米国の口座番号とルーティングナンバー
- オーストラリアの口座番号とBSBコード
- ニュージーランドの口座番号
- シンガポールのSWIFT/BICコードと口座番号
英ポンド、ユーロ、ハンガリーフォリント、米ドル、豪ドル、ニュージーランドドル、シンガポールドルについては、上記のように、現地の銀行に口座情報が付与されます。
残念ながら、日本円は対象外(マルチカレンシー口座は開設できるが、口座情報は付与されない)です。
まるで個人口座を開設したみたいにUSDが米国内から通常送金で着金できる
例えば、米ドルですとCommunity Federal Savings Bank(CFSB)にトランスファーワイズが口座を持っているのですが、個人口座情報が付与されるということは、あたかも、CFSBに個人口座があるように、他の銀行などから普通に送金手続きをすると、マルチカレンシー口座に着金するのです!!
米国に銀行口座を保有することは難しく、米国の社会保障ナンバー(Social Security Number:SSN)を保有していないと口座開設ができません。
唯一、ユニオンバンクには開設可能ですが、使い勝手が悪いうえに、手数料も高額です。
私の場合は、米国内にある証券会社(E*Trade)からWireで約6万ドルを出金処理したのですが、トランスファーワイズの指定する口座情報を入れるだけで、あっという間に送金・着金できました。(一回の処理でできました。)
トランスファーワイズの送金金額は、一回当たり日本円相当100万円以下に制限されていますが、着金の場合はこの制限は無いようです。
マルチカレンシー口座の残高からの同通貨送金は激安
通常のトランスファーワイズ送金の場合は、トランスファーワイズで送金依頼を作成し、指定の口座に対してお金を振り込むことで送金が実行されますが、マルチカレンシー口座の残高から送金を実施する場合は、振り込んだりすることがないので、非常に短時間かつ、トランスファーワイズへの振込手数料を節約できます。
私は、USDをInteractive Brokers証券に送金したのですが、一回当たり1.05ドルの手数料でした。約6万ドルを送金するのに、7回送金を実行したので、7.35ドルかかりましたが、これでも十分お安いと思います。
マルチカレンシー口座間の両替
マルチカレンシー口座間では両替ができます。残念ながら両替手数料がかかります。両替金額の0.5%程度です。
マレーシアリンギットの場合
マレーシアの通貨リンギット(MYR)は、米ドルや日本円などのように、口座情報が付与されませんので、他からまるで銀行送金のようにお金を送ることはできません。マルチカレンシー口座で他の通貨から両替するか、振り込みで入金するしかないようです。
資金を振り込みなどで追加する場合でも、”マレーシアリンギット”で追加することができず、他の通貨を両替してマルチカレンシーのマレーシアリンギット口座に入金することになります。
つまり、マルチカレンシー口座というあたかも自分の口座のような感じのものが手に入るのですが、米ドルや日本円のように、同通貨の送金着金が自由にできるのかというとこれは難しいようです。
マルチカレンシーのマレーシアリンギット口座からマレーシアにある銀行へ同通貨送金する場合は手数料激安で送金可能ですが、そもそも両替したり、外貨扱いで入金しなければならないので、わずかとはいえ余計な手数料と手間がかかるばかりです。
マルチカレンシーのマレーシアリンギット口座は使いづらいという印象です。今のところピンとこないかんじです。(うまい使い方をご存じの方はご教示願います)
マレーシアリンギット送金の最安は?
ここからはちょっと裏技になりますが、マルチカレンシー口座とInteractive Brokers証券との組み合わせで、非常に低コストなマレーシアリンギット送金が可能です。ただし、高額でないとお得になりませんし、お得になるといってもごく少額ですので、実用上はあんまり意味がないのでご参考程度にしてください。
簡単にするためにマレーシアリンギットでMYR38,000をマレーシアの銀行に届ける場合について見てみます。(2020年11月25日夕刻の実地調査結果、日時により為替レートが変わるのであくまで参考)
トランスファーワイズのみを利用
日本円⇒リンギット
送金額:978,500円 手数料:7,631円 両替額:970,869円 為替レート:25.5492(JPY/MYR)
手数料率=手数料/両替額=0.786%
これが、現時点までの最安送金です。(トランスファーワイズまでの送金手数料含まず。何かの無料サービスが使えるものとする)
Interactive Brokers証券とトランスファーワイズのマルチカレンシー口座利用
- 三井住友銀行から、日本円をInterative Brokers証券の日本の非居住者口座に送金。送金手数料800円。
- Interactive Brokers証券で日本円から英ポンド(GBP)に両替。手数料2ドル=約210円。
- Interactive Brokers証券の無料出金サービス(月一回無料)を使って、トランスファーワイズのマルチカレンシー英ポンド口座に入金。手数料無料。
- トランスファーワイズで英ポンド⇒マレーシアリンギット送金*
*英ポンド⇒リンギット
送金額:GBP6,995.88 手数料:GBP35.08 両替額:6,960.8 為替レート:5.4591(MYR/GBP)
円換算送金額:977,101.9円 手数料:4,900円 両替額:970,869
手数料合計 800円+210円+4,900円=5,910円
★コストとは別の話ですが、実際にマルチカレンシー口座からCIMBに送金してみました。びっくりしたのは、数分で、CIMBに着金確認ができたことです。驚くべき速さです。
Interactive Brokers証券とトランスファーワイズの合わせ技
手数料率=手数料+両替額=5,910/970,869=0.608%
ほんの僅か、安くなりますが、日本円からトランスファーワイズで直接送るのと比較して、1,700円程度しか安くなりませんので、ちょっとマニアックな方法だとお考え下さい。
各種通貨からのマレーシアリンギット送金手数料一覧
参考に、各種通貨でのトランスファーワイズマレーシアリンギット送金をまとめておきます。
MYR38,000 | 送金額 | 手数料 | 両替金額 | 手数料率 | レート | 備考 |
JPY | 978,500 | 7,631 | 970,869 | 0.786% | 25.5492 | JPY/MYR |
USD | 9,379.26 | 54.77 | 9,324.49 | 0.587% | 4.0753 | MYR/USD |
EUR | 7,852.26 | 44.19 | 7,808.07 | 0.566% | 4.8668 | MYR/EUR |
GBP | 6,995.88 | 35.08 | 6,960.80 | 0.504% | 5.4591 | MYR/EUR |
外貨で着金する場合は絶対有利
証券取引をなさっている方で、米ドルやユーロなどといった外貨を着金する機会がある方の場合は、このマルチカレンシー口座がいかに便利なものかお分かりいただけると思います。
証券会社からの出金・送金は、たいていの場合、本人名義の口座にしかできません。いわゆる「Futher Cresit to ***」による送金を受け付けてくれないのです。
しかしながら、現在は7通貨に限定されるものの、トランスファーワイズのマルチカレンシー口座を開設することで、口座情報が付与され、本人名義の口座として機能するのです!
これにより、例えば、米国内にあるA証券、B証券の間の資金移動が低コストで実現できます。A証券からトランスファーワイズマルチカレンシー口座へ国内送金し、トランスファーワイズからB証券へ国内送金するわけです。米国内なら米ドルのまま両替なしで資金移動ができます。
筆者は外資系日本法人に勤務しており、米国本社から株式でボーナスを支給されるのですが、米国SSNがないので銀行口座が開設できず、今までは、株式のまま寝かせておくか、売却後日本の口座に送金するかしか選択肢がありませんでした。日本に送金すると、送金手数料はもとより、着金じに被仕向送金手数料が発生したり、日本円への両替手数料が発生するので苦々しく感じていました。
また、筆者は、Interactive Brokers証券で株式投資しているので、そちらへの資金移動もいちいち日本を経由していました。
今回、トランスファーワイズのマルチカレンシー口座が使えるようになったことで、米国の証券会社からトランスファーワイズのマルチカレンシー口座に送金し、ドルのままで、Interactive Brokers証券に送金することが可能になり、手数料も手間も極小化できたと思います。
さらに一部は、マレーシアに送金していますが、これも、Interactive Brokers証券とトランスファーワイズの組み合わせで、お安く便利になりました。
Interactive Brokers証券もトランスファーワイズのマルチカレンシー口座も、米国SSNは不要で、日本居住者としての証明(パスポートや運転免許とマイナンバー)ができれば簡単に開設できます。
今後の展望
今までの機能だけでもじゅぶん使い道があるのですが、米ドル口座では、Achによるダイレクトデビット(口座引き落とし)機能を使えるようにしようとしているみたいです。
ダイレクトデビットが使えるようになると、さらなるコスト削減が期待できますし、送金にかかる時間も早くなると思います。
こうなってくると、資金移動や決済機能としては、銀行口座とあまり変わらないレベルと言えるんではないでしょうか。
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